国際カップル半世紀、満身不具合夫婦のフランス移住紀行ーその14

フランスでの運転免許証―顛末

 

私の国際運転免許証は、9月26日で1年間の有効期限が切れた。

フランスでの車の運転は主に私の役割だし、病院通いには必須だ。しかもほぼ毎日運転しているので、運転できない事態はどうしても避けたい。

1年前に車も買ったし、地下駐車場も苦労してやっと使えるようになったばかりだ。

当初は国際運転免許証の期限内に一旦帰国し、再発行したものを持って再度フランスに入国してから、今後のフランスでの免許証についてどうするか、落ち着いて検討するつもりだった。

ところが、このコロナ禍で、日本への入国手続きがとんでもないことになっていて、様子見をしているうちに、有効期限内(1年)の帰国は不可能になってしまった。(ブログ「国際カップル半世紀、満身不具合夫婦のフランス移住紀行ーその11 ■COVIT-19」2020-10-12版をご参照ください)

 

国際運転免許証以外で運転するためには、こちらの運転免許取得試験を受けて、正式にフランスの免許を取得する方法と、日本の運転免許証をフランスの運転免許証に変更する方法とがある。

正式に取得した場合は、日本の運転免許証もそのまま保持できる。しかし、変更する場合は、日本のものはその時点で没収されるので、日本に帰ってから何らかの再発行手続きが必要だ。以前は、日本の免許証を没収されることはなかったらしいが、EU各国共通のルールとして、免許証の重複所持は認めないことになった。テロ対策だというがよく考えるともう一つピンとこない。意味不明な行政手続きはどこの国にでもあるようだ。

日本に戻ってから免許証の再発行手続き自体はさほど面倒ではない。

ただ、日本のコロナ禍水際対策が続く間は、空港からはレンタカーしか使えない。つまりは日本の免許証なしでの帰国は難しい。結局コロナ対策解除後にしか帰国はできないことになる。

 

いろいろ考えた末、結局日本の免許証をフランスのものに変更する手続きをすることにした。幸い、2020年8月から申し込み手続きがWEB上でできるようになった。

ANTS (AGENCE NATIONALE DES TITRES SÉCURISÉS:国家安全性証明局?)のサイトから、 申込み書式に沿って質問に答え、必要書類のデータを添付して送信すればいいのだ。

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ANTS WEB 内の個人ページ入り口。ここから様々な申請や問い合わせができる。



ただし、必要書類の中には、日本の自動車安全運転センター発行の「運転免許経歴証明書」なるものがあって、それを日本から取り寄せなければならないことが分かった。

早速8月初旬に東京の長男に頼んで証明書を取り寄せてもらう。

菅政権になってから、少し風向きが変わってきたようだが、日本はまだまだ紙とハンコの手続き文化だ。

まずは経歴証明書をスマホで撮影したデータをメール添付で送ってもらった。それを、日本の運転免許証の裏表両面スキャンデータと一緒に、ニース在住の日仏法定翻訳専門家に送って、フランス語に訳してもらう。

免許証の翻訳など私にでもできそうな簡単なものだ。ただ正確な翻訳かどうかというより、公文書として法定翻訳家の翻訳であることの証明が必要なのだ。何度かやり取りの上、最終的に正式な法定翻訳版をデータで受け取ったのが8月21日だった。

こちらで入手できる他の資料データも全て揃えて最終的に申請手続きを完了したのが、ちょうど国際運転免許証の期限切れ1ヶ月前だった。

申請用顔写真は、近所の写真館で撮ったデータのIDコードを入力するシステムだ。顔写真を寸法に合わせて切り抜いて貼り付けたりしないで済むのだ。

 

手続きの進捗状況は、ANTSのサイトに登録した個人ページにパスワードを使って入れば分かることになっている。

しかし、その後何度マイページ内を覗いても全く変化はない。1ヶ月以上たってから、娘に頼んで改めてよく確認してもらうと、もし3週間以上たっても進展が見られないときには、電話をして確認するようにとの記述があるという。電話番号は4桁の短縮版であったりして、分かりにくいことこの上ない。

申請手続きはキチンと済ませたという気もあってか、なかなか電話をする気力がわかなかった。この手の問い合わせ電話は結構気合が必要なのだ。

雑事も重なって、結局電話連絡できたのが、申請から2ヶ月たった10月26日だった。

音声案内に従って順番に数字を選んでプッシュするタイプの受付電話だ。何度も番号を選んではプッシュし、やっと最終呼び出し音のところにたどり着いた。待機用電子音楽を繰り返し聞きながら待つこと約25分。半分あきらめかけていたところに突然肉声の反応があった。

一通りこちらのデータを確認したあと、帰って来た答えは、日本の運転免許証に記載された有効期限内であれば、フランス運転免許証への変更手続き中でも運転は可能ということであった。

通常でもそうなのか、コロナ禍状況での特別処置なのかは分からない。

しかも、変更手続きがいつ完了するかは全く予想がつかないとのこと。

大体の目安だけでもと粘ってみたが、それぞれ個別の事情次第なので、全く分からないとのことだった。まあ、私の免許証は2022年までは有効なので、とりあえずは焦らずに待つことにした。

何はともあれ、このまま運転が続けられることが分かっただけでもほっと胸をなでおろした。

 

さてそこで、普段の運転時に携行する免許証に当たるものをどうするかが問題だ。ANTSの担当官は具体的に何を所持しろとは言わない。こちらでは、今や免許証自体の所持が必要とされていない。

 

この1年一度も免許証の提示を求められたことはないし、周りのフランス人も免許証を提示した記憶がないという。

しかし、考えてみれば免許証の提示が必要なのは、事故のときだ。

変更手続き期間中に、日本の免許証で運転している私が事故にあったとき、状況をフランス語できちんと説明できる自信は全くない。

そこで、以下の書類のコピーを折りたたんで持ち歩くことにした。

1:運転免許証の変更手続き申請受付証のコピー。受付日時と、受付ID番号が記載されている。

2:日本の運転免許証の裏表両面のコピーとその法定翻訳書類コピー

3:念の為に日本の期限切れ国際運転免許証のコピー

 

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日本の国際運転免許証。いつデザインされたものか知らないが、紙はボサボサしたボール紙、サイズも中途半端で持ち歩くとボロボロになる。

 

フランスでは、運転免許証(終身有効)自体持ち歩かなくてもよくなった。

確かに警官は皆携帯端末を持っているので、名前と住所だけで即座に確認できる。事故や違反履歴もすぐさま確認できるから、警察の管理も楽だ。こちらには免許証不携帯という違反がない。

日本でもデジタルトランスフォーメーションが進めば、免許証の携帯義務はなくなるはずだし、余計な心配が一つ減る。

ついでに有効期限も書き換え無しの終身にしてもらえないものか。

まあ、75歳とか、80歳とかになったらきちんとした適性検査は必要かもしれないが、免許更新の手間暇、社会コストは大いなる無駄に思えてしようがない。

まあ、免許更新制度は大きな警察利権の一つだから、日本からなくなることはないのかもしれない。

 

いずれにしろ、これで安心して運転ができることが分かったが、次の課題は、ビザの延長問題だ。これも目処がたったら改めて報告させていただくつもりだ。